今日もまた 頑張って背伸びしても
届かない距離を縮めようとする
あなたにキス
「バルフレアって…頭を撫でるのが好きなの?」
バルフレアは何かある毎に私の頭をよく撫でる。
私が悲しそうな顔をしていたら、「大丈夫」と言うようにポンポンと。
からかわないでよって怒ったときには、わしゃわしゃと。
甘えたくて シャツの袖を握ったときには、優しく髪をとかすように。
「嫌いか?」
「嫌いじゃないけど…って、私が聞いてるのよ?」
頭を撫でられるのは、嫌いじゃない。
むしろ心地よくて、とても好きだ。
「丁度いいところに頭があるからな。」
「…それって…私が小さい、と言うことなの…?」
「……まぁ、そういうことになるな。」
あなたは私の気持ちも知らないで
楽しそうに笑って意地悪するんだ
「…結構気にしてるんだからね…!」
「いいじゃないか、身体は大人だ。」
見えてるぞ、と指が差されたそこ。
大きな襟刳りから覗かす、胸の谷間。
「信じられない…!」
ぷいっとバルフレアに背を向ける。
そしたらあなたは まるで宥めるようにその大きな手で
私の頭をそっと撫でるの
「撫でられるのは…嫌いじゃないわ。私、あまりお母さんに頭を撫でてもらったことがないの。」
「ああ…確かいつも怒られてた、だったか。」
「だって…、あの頃は嫌だったんだもの。別にシスターになりたかった訳じゃなかったし…。」
バルフレアに頭を撫でられると、なんだか嬉しくて仕方が無かった。
褒められているような、いい子だねって 言ってもらえているような そんな気がして。
幼い頃、して欲しくてもしてもらえなかった反動が、今になって表れてるのかも知れない。
「あなたは?」
「ん?」
「バルフレアは…よく頭を撫でてもらっていた?」
う〜んと唸るように記憶をたどるバルフレア。
その頭の中には、もしかしたら
優しく笑うお父様の姿と 楽しそうに笑うバルフレアの姿が浮かんでいるのかもしれない。
「……さぁな。昔のことだ。もう、忘れたよ。」
答えてやれなくて、ごめんな。
そう言って また私の頭を撫でたバルフレア。
その顔が、どこか寂しげで 悲しげに見えて。
私が、今のあなたと同じような顔をしたら
あなたはきっと 私の頭を撫でる
だから私はこう言うの。
私もしてみたいって。
そうすると あなたはちょっと困った顔をするのでしょう?
あなたが私に詳しいのと同じで
私だってあなたに詳しくなったんだから。…まだまだ敵わないけど
ぶつぶつ文句を言いながらも バルフレアは私にあわせてしゃがんでくれる。
いつも、見上げている顔がそこにはあって。
バルフレアと一回りも小さな手で、その頭を撫でてみる。
私に してくれる時と 同じように
「…どう?」
「…どうって…微妙…。」
「子供あつかいされてるみたい?」
「…そうだな、の気持ちが分かった。」
つまりそれは、私を子供あつかいしていた そういうことかなバルフレア君。
私が毎日毎日 どれだけ頑張っているか知らないでしょう?
子供ならこんなこと、しようとも 考えもしない。
やっと近づいた距離
やっと縮んだ距離
あなたの額にそっとキスを送る
面食らったのか 動かないバルフレアを置いてその場を去る。
真っ赤になって、自分のしたことを後悔しないうちに。
「。」
呼び止められて、ちゃんと振り返る前にキスされる。
酸欠になってしまいそうなくらい、長い長いキス
「ばーか。これが“大人”だ。」
もっと成長しろよ、そういってまた頭を撫でる。
…この解釈はきっと間違っていない
私がまた「子供あつかいしないで」と怒って
私がまた「私もしてみたいからしゃがんで」と強請るように
わざと、頭を撫でたってこと。
明日からは
頑張って背伸びしても届かない距離が縮みそうです。
***
背伸びしても届かないから、どうにかしゃがんでもらう方法を探していたんです。
バルフレアって結構背が高いですよね。バッシュより背が高いことにビックリしました。
ヒロインは一番ちっこいです。
デカとチビ。それが好きです。(てめぇの趣味か!)