、首どうかしたの?」

 

女の子グループの食後のティータイムで、

紅茶を飲もうとしたが突然「いたたたたっ」と悲鳴をあげた。

マッサージするように首を撫でるので、パンネロが心配して声をかけたのである。

 

「なんかさ、最近首が痛くって…。」

「疲れてるんなら休んだほうがいいわ。」

「そうね、あなたよく無理するから。」

 

アーシェもフランも、気になってそう口にしたのだが どうも疲れはなくむしろピンピンしているらしい。

 

「だったら一体どうしたのかしら…。」

「…本当、近頃急に痛くなったんだよね。」

 

どんどん冷めていく紅茶の存在を忘れ、4人はうんと唸り原因の究明にのりだした。

 

***

 

「バールフーレアー!」

「…っ、何すんだよヴァン。いてぇだろ。」

 

いきなり後ろから飛びついてきたヴァンを一蹴し、だるそうにコキコキと首を鳴らした。

 

「まだ首痛いのかよ。…もう歳なんじゃねぇの?」

「殴られたくなかったらやめとけよヴァン。ところで何の用だ、俺は忙しいんだ。」

「俺と一緒に武器屋見にいこ「断る。」

 

「何でだよ!」と反抗したものの、バルフレアは全く聞く耳を持たず

さっさとヴァンの前から去っていこうとする。

それをまたヴァンが大声で止めようとするものだから、バルフレアの眉間の皺は更に増えていった。

 

「そんなに行きたきゃ将軍と行けよ。」

「バッシュはアーシェとこれからの進路話すって言ってどっかいった!」

「じゃあ あ・き・ら・め・ろ!」

 

ぶぅ…と拗ねたヴァンは突然あっと声を上げた。

 

「分かった!のとこ行くんだろ。だから今日はだめなわけだ。」

「だったら何が悪いんだよ。」

「あ、おい待てって!俺もついてくって〜!!」

 

***

 

「あっ、バルフレア!」

 

バルフレアが部屋に入ってきた途端に、は嬉しそうにそばへ駆け寄った。

あんまりが幸せそうに笑うものだから、バルフレアも(先程の眉間の皺はどこへやら)つられて笑顔になる。

 

「バルフレアも紅茶いかが?」

「いや…今は遠慮しておく。ちょっと首が痛くてな…薬持ってないか?」

「それなら今丁度いいお薬があるわ。この間道具屋さんにいただいたの。」

 

 

パタパタと奥の戸棚へ薬を取りに行くと それを追うバルフレア。

そのそばでは、お茶をしていた女性陣(それからバッシュ)にヴァンが加わりまた話を始めた。

 

 

 

「え?も首痛いのか?バルフレアも痛いって言ってたぜ。」

「バルフレアさんも?二人とも…大丈夫なのかなぁ…。」

 

5人が向けた視線の先では、が戸棚の上段に手を伸ばしていた。

後もう少し、というところで の首から悲鳴が聞こえた。

 

「いっいたい!」

「あ、悪い…。俺が取る。」

 

(上向くのは苦痛じゃないんだけどな。)

 

 

ひょいと薬の瓶を手に取ったその瞬間、瓶の音とは違う金属音が床から聞こえた。

見ればそれはバルフレアがいつも身に着けているカフスで どうやら手を伸ばしたときに腕が耳に触れてしまったらしい。

 

「…っ!」

「大丈夫、私が拾うから。」

 

(あれ?下向くのは全然痛くない。)

 

 

 

「そういうことか、俺二人の首痛い理由わかっちゃった。しょうがねぇ奴ら!」

「まったくだわ。」

最近あいつらずっと仲良さそうに喋ってんもんな、と苦笑しながら言ったヴァンの台詞に

珍しくアーシェは同感だと頷いた。

 

「まぁまぁ。…でも何だか邪魔しちゃ悪そう。小父様、一緒に買出しでもしましょうか。」

「そうだな。いつもはあの二人が仲良く行ってるが…今日は私たちが行かなくては駄目なようだ。」

 

(デートと言う名の)買出しの時間を奪っても 今日は恨まれることはないだろう。

何故なら、薬の瓶とカフスを受け取るぞれぞれの手がそっと触れただけで

恥ずかしそうに顔を赤らめると、それを愛おしそうに見つめるバルフレアが視線の先にいるのだから。

 

 

 

 

(もっと話していたいのに…バルフレアの方を見ると…首が…)

(くそ、何でいつもを見ると首が痛み出すんだ…!)

 

((そういえば最近二人でよく話すようになって…))

 

((その時くらいから首が痛むようになって……))

 

 

 

「「あ」」

 

 

 

照れたように突然笑いあう二人の姿があった。

 

 

 

「…アーシェ……。」

「なによ、ヴァン。」

 

 

「バカップルって、

 

 

「奇遇ね。丁度私もそう思っていたところよ。」

 

 

 

 

「ところで。この街にいいバーがあるらしいんだが、今夜一緒にどうだ。」

「本当!是非一緒に行きたいわ。」

「……どうでもいいけど、あなたたち 座って話したらどうかしら?」

 

フランは冷静にそう呟くと、柔らかい笑みを浮かべながらドアノブを捻った。

 

 

 

 

 

 

「バカップルって、公害だと思いませんか。」 配布元/リライト 様

 

***

いろんなしがらみを無くして、二人がはれて付き合うようになったらこんな感じじゃないかなって。

初々しい雰囲気を目指してみましたが、惨敗。

バルさんとうちのヒロインはデカチビコンビなので、いちゃいちゃと話す機会が増えたことで

首が痛くなっちゃう…ということなのですが。分かりずれぇーorz