ダルマスカ王女“誘拐”から数時間。

5人だった飛空挺の中も今では7人に増え、以前にも増して賑やかになっていった。

 

 

ヴァンが操縦席を噛り付くように眺めている中、

パンネロとは新しい友情を築き上げていた。

歳が近いのもあるだろう、初めは緊張していたパンネロも今では楽しそうに笑っている。

 

…もっとも、と一番歳が近いのは 同年齢であるアーシェなのだが

彼女の姿はここには見当たらない。

 

 

 

「ねぇ、それとっても可愛いわ!」

「本当?ありがとう。」

 

パンネロがそれと言って指したものは

の髪を少しだけまとめているバレッタのこと。

 

「これ、お母さんの形見なの。だから、可愛いなんて言ってもらえると嬉しいわ。」

「うん!にとっても似合っている!清楚なイメージがピッタリだもの。」

「そうかなぁ…?パンネロだって似合うわ、可愛いもの。」

 

 

お世辞でもなく煽てあっている訳でもなく、本当に思ったことを口にしているのだろう。

女性二人のオシャレ会談は尚も続く。

 

 

「ううん…。このバレッタ、だから似合うのよ!

 いいなぁ…私もみたいな大人になりたぁい…。」

「そうかぁ…?俺、は俺と同い年くらいだと思ったぜ。」

 

 

楽しそうなパンネロの声に興味が反れたのであろう。

穴が開いてしまいそうなほどの視線は操縦席を離れ、パンネロとに向けられていた。

 

 

「だって俺よりこんなに小せぇしな!」

 

 

ポンポンとの頭に手を当てて二カっと笑う。

「失礼だからやめなさい」というパンネロの注意が聞こえているのかは分からない。

 

「まっ、でもこの髪飾りはに似合ってると思うぜ!」

「ありがとう、ヴァン。」

 

褒められるのが恥ずかしいのか、少しだけ顔を赤らめて

優しく微笑む。

 

 

「そういやさー、この間めちゃくちゃ強ぇモンスターがいてさ――――」

 

 

 

オシャレ会談も終了し、ヴァンの話に花を咲かせ始める三人の声を

黙って聞いていた一人。

 

 

「…………似合ってるねぇ……」

 

そんな言葉を漏らした張本人の顔に一瞬目をやりフッと微笑むフラン。

その仕草に気付いたのか、今度はバルフレアがフランに目を向けた。

 

「…なんだよ。」

 

「別に。何にもないわ。」

 

船内を見回りに行ったのだろう。

三人のにぎやかな声はいつしかなくなっていた。

 

 

 

***

 

 

 

夜も深まり、皆が寝静まった頃。

バルフレアは部屋の扉を開けて廊下を見渡す。

そこにはやはり想像してた通りの姿を見つけた。

 

 

「やっぱり居たな。」

「?あぁ…バルフレア。言ったでしょう?毎日お祈りするのが誓いの一つなのよ。」

 

 

月の光に照らされて、目を閉じたままそう呟いただったが

丁度「お祈りの時間」が終わったのだろう。

すっと立ち上がり、スカートを払うとバルフレアを見た。

 

「もしかして…起こしちゃった?」

「いや…。」

 

そう言ったっきりだんまりになったバルフレアを不思議に思ったのか、

クエスチョンマークを浮かべ、何事かとその顔を伺った。

 

「どうかした…?ねぇ、大丈夫?…わぁ!?」

 

反応する間もなく、避ける余裕もなく、腕を引っ張られたと思ったら

の視界はバルフレアの胸で真っ暗になった。

 

何がしたいのかと尋ねようとしたその時。

さらさらと流れ落ちるそれ。

解かれた髪は、そのままサラリと元の状態へと返っていく。

 

ようやく視界が復活し、手に渡されたバレッタとバルフレアの顔を交互に見ると

そこには彼特有のいつもの笑みがあった。瞬間胸をよぎる嫌な予感。

…この笑顔があるときはいつも何かと翻弄されているからだ。

 

その予感は見事的中することとなる。

 

 

「いつものも十分魅力的だが… 飾らなくても元から綺麗なんだ。

 こうしてる方がずっと似合ってる…。」

 

 

言葉を失い、口をパクパクとしているを尻目に 

バルフレアは満足そうな顔をして部屋へともどって行く。

 

 

「なな何今の…。」

 

 

からかって遊ばれていると分かっていても、何も言い返せない。

否、何も言えるわけがない。

こんなにもこの心を戸惑わされるのだから。

 

 

 

 

***

 

 

 

「おはよー、!」

 

「おはよう、パンネロ。今日はとてもいい天気よ。」

 

「本当ね〜。あれ?、髪型変えた?とても似合ってたのに。」

 

「えっ!あ、うん。ちょっと、あの、今日はなんとなく…そう!なんとなくなの!」

 

 

 

何をそんなに慌てているのだろうかと不思議に思うパンネロを尻目に、

意味ありげに小さく笑うバルフレアの姿があった。

 

 

 

 

 

 

***

綺麗と言われて嬉しくないひとはいないですよね。

何だかんだいって嬉しくなって、翌朝には髪を下ろしたヒロイン。みたいなね。

ポニーテールではないですよ。でも上手く説明できません。(ぇ

まだ二人に恋愛感情はないかと思います。

バルフレアはこれくらいサラリと言ってしまうだろうし、ヒロインも

「からかわれてしまった」って思ってる感じです。

そのうえ。このお話にでてくる「バレッタ」 後の長編に少し関係してきます。

 

…ちなみに私は男女問わず、裸眼だった人が時々眼鏡かけてるのをみるとホワァァってなります。(うわホントどうでもいいよ)